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SDGsへの取り組みとSXの関係性―企業活動と社会改善の好循環をデザインしよう

ESGの観点が企業の命題であることに加え、昨今はSDGsへの取り組みの重要性も高まりつつあります。社会と企業の関係性が密接になる中、新たに注目されているのが「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」という概念です。目まぐるしく変わる情勢の渦中で、企業はどのような生存戦略をデザインすべきなのでしょうか。そのヒントを、SXをテーマに解説します。

SDGsとESGは企業の最重要課題

SDGsとは、持続可能な世界を実現するために掲げられた、地球上すべての人々を対象とした長期目標です。その緊急性や具体性への言及は年々存在感を増しています。日本政府からも昨年末「SDGsアクションプラン2022」が発表され、企業は当事者意識をもってSDGs達成を目指す姿勢を求められています
こうした時代背景と共に、企業自体の持続性についても語られる場が多くなってきました。企業におけるESGの重要性が高まったきっかけは、さかのぼる2006年のPRI(責任投資原則)発足です。それから約15年を経てESG投資がスタンダードとなり、現在はESGにコミットしない企業は資本市場から締め出されるとまで言われるようになりました。

SDGsやESGは収益を高める一つの要素に

環境と社会に配慮した事業展開や市場活動をすることが、企業の最重要課題である。こうした認識が世界に浸透したことは、ビジネスの根幹すら変えつつあります。これまで収益性の高いコア事業に対して副次的なものとして捉えられてきたSDGsやESGへの取り組みは、主事業と融合させたほうが合理的である、と考えられるようになりました。すなわち、ESGやSDGsに貢献するコア事業によって収益性を高めることが、昨今の経営戦略の主流となっているわけです。

SDGsやESGへの関与度はブランド力や採用力にも直結

実際、この戦略は市場ニーズとも重なります。「企業版SDGs調査2021」(ブランド総合研究所)によると、SDGsについて認知する消費者は、SDGsへの企業の関与度を好感度や就職意欲、投資意欲といった項目に紐づけていることが明らかになりました。つまり、今後SDGsの認知が広まれば広まるほど、SDGsやESGに取り組む企業姿勢はブランド力を強化するものとなり、マーケティングや採用などあらゆる面で活きてくると予想されます。

SXの概念とSDGsへの取り組みの重要性

SDGsやESGの重要性に紐づく形で企業が意識したいキーワードが、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)です。SXとは、企業の持続可能性を主軸にした経営変革を表す言葉で、企業課題を包括的に解決する一つの指標として注目されています。

新型コロナウイルスの蔓延による劇的な生活変容やAI技術の急速な発展、メタバースの到来など、昨今の世界の変化は目まぐるしく、インパクトの大きいものばかりです。こうした不確実かつ非連続な時代の渦中で、企業はESGへの取り組みと収益性を両立しつつ、生き残らねばなりません。

こうした中でSXの観点から企業の指針を考えると、改めてSDGsへの取り組みが極めて重要であることがわかります。企業がSDGsに貢献すると、社会が企業の力によって支えられ、変動によるダメージを軽減することができます。それに伴って社会基盤が安定すれば、企業の経営資源は豊かになるでしょう。そうして企業のリソースに余力が生まれれば、SDGsへの貢献度はさらに高まり、好循環が巡り続けます。この循環こそが、SXを実現します。

SXを実現する原動力はデザイン思考

では、このSX実現のために企業ができることは何でしょうか。手段としてぜひ取り組んでいただきたいのが、DX(デジタル・トランスフォーメーション)です。DXはSXと比べて認知度の高い印象ですが、誤解を生みやすい言葉でもあります。

例えば、ペーパーレスを目指して紙の資料をデータ化するといった取り組みや、それに伴うシステム導入は、いわゆる業務のデジタル化(デジタイゼーション)に分類されるものです。一部業務をデジタル化したことをDXと呼んでいる事例もありますが、厳密に言えばそれはDXではありません。

真のDXとは、デジタル技術を活用して組織やビジネスモデルそのものを変革し、新たに顧客体験や社会価値を生み出すことを指します。今でこそ動画配信プラットフォームとして世界中に名を馳せたNetflixは、かつてDVDのデリバリーサービスを主事業とする会社でした。プラットフォームでのみ視聴可能なオリジナルコンテンツを作り、サブスクリプションモデルで提供することで一躍成長を遂げたNetflixは、まさしくDXに成功した企業の一例です。

このDXは、まさに現代を生き残るための企業の生存戦略そのものであり、DXへの取り組みはSXに直結するものでもあります。ただし、このDXは技術力だけでは成功しません。先端技術を活かし、社会課題を解決するために戦略をデザインする「デザイン思考」が伴うことで初めて、DXは実現します。

デザイン思考を起点とした持続可能性の高い企業戦略を

今回はSDGsやESGへの取り組みの重要性と、その地続きにあるSXというキーワード、さらにはSX実現の手段であるDXについて解説しました。これらはすべて、持続可能性のある世界で行われる市場活動において密接につながっており、今後企業経営に携わるすべての人々が無視できない、避けて通れないものと考えて良いでしょう。
そして、この壮大な輪の起点となるのが、一人ひとりのビジネスパーソンがもつデザイン思考です。社会課題の解決や企業戦略の礎となる技術や、ビジネスにおけるトレンドは刷新され続けていますが、それらの活用方法をデザインするのは、一人ひとりのビジネスパーソンです。VISITSは、未来のビジネスパーソンの育成に向け、40社ほどの大手企業様と共に毎年「デザイン思考フェス」という大学生を対象にした企画を主催しています。SDGsやESGに積極的に取り組む企業が一同に集い、野心的なプログラムを展開する本イベントに昨年は1万人以上が参加しました。

今後より多くのビジネスパーソンがデザイン思考力を身に着け、企業改革をリードしていく世の中を創造していくことを陰ながら楽しみにしています。

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