誤解されたイノベーションの本当の意味とは 新結合を生み出す「4つの組み合わせ」を考える

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また、あのスティーブ・ジョブズもイノベーションの源泉である創造力について、「創造力とは、いろいろなものをつなぐ力だ。一見すると関係ないように見えるさまざまな分野の疑問や課題、アイデアやひらめきを上手につなぎ合わせる力だ」と表現している(カーマイン・ガロ著『スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション』より)。

では「新結合」の意味を具体的に考察していこう。「新結合」にはさまざまなパターンが存在するが、本書では「ニーズ」と「シーズ(技術やデータ等のアセット)」の新結合によって、「新しいソリューション」が生まれる、アイデア創造に関する「新結合」について考察する。

ニーズには、顕在ニーズと潜在ニーズがある。顕在ニーズとは、「あなたの困りごとは何ですか 」と聞かれたユーザーが、「〇〇が欲しいです」と答えられるニーズである。つまりユーザー自身が「答え」を持っているニーズとも言える。

この顕在ニーズに対して、既存のシーズを組み合わせてすでに世の中に提供されているソリューションは、すでに提供されているという点で、現時点ではもはや「新結合」とは言えない。

スマホはなぜ新結合と言えるか

一方、顕在ニーズと既存のシーズの組み合わせであっても、その組み合わせが「これまでにないもの」であれば、新結合により新規の価値あるソリューションが生まれる可能性がある。

さらに、顕在ニーズに対し、新規シーズ(新しい技術や新たに手に入ったデータ等)を開発して組み合わせると、新規の価値あるソリューションが生まれる可能性がより高くなる。

また世の中には、「潜在ニーズ」というものが存在する。これは、「あなたの困りごとは何ですか 」と聞かれたユーザーが、「〇〇が欲しいです」と答えられないニーズである。ユーザーが「答え」を持っていないということだ。 

ガラケーが主流だった時代に初めてiPhoneというスマホが出てきた瞬間をイメージしてほしい。ガラケーで満足していたユーザーは当時、スマホという存在も知らず、まして使ったこともないので、「スマホがなくて不満」とは言えなかったはずである。

しかし、いったんスマホを体験した人は、その多くがもはやガラケーでは満足できなくなってしまった。「携帯電話でPCのようにさまざまなアプリケーションを楽しみたい」というのは、当時では潜在ニーズだったのである。

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